志布志事件
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志布志事件(しぶしじけん)は、2003年4月13日投開票の鹿児島県議会議員選挙・曽於郡選挙区(当時、改選数3)で当選した中山信一県議会議員(同年7月に辞職後、2007年4月の県議選で当選し議員に復帰)の陣営が曽於郡志布志町(現・志布志市)の集落で住民11名に現金191万円を配ったとして、議員やその家族、現金を受け取ったとされた集落の住民らが公職選挙法違反容疑で逮捕された事件の通称。事件を巡る捜査で、鹿児島県警察が自白の強要や6か月間にわたる異例の長期勾留など違法な取調べを行ったとされる。別名、鹿児島事件(かごしまじけん)とも。
マスメディアでは鹿児島選挙違反事件(かごしませんきょいはんじけん)や鹿児島県議選買収事件(かごしまけんぎせんばいしゅうじけん)との通称も使われる。
事件経過
2007年2月23日、鹿児島地方裁判所(谷敏行裁判長)は
4回行われたとされる会合のうち2回は日時が特定されておらず、日時が特定されている2回についても中山元議員のアリバイが成立する
そもそも、7世帯の小規模な集落で多額の現金を供与する行為が票の取りまとめに結び付く効果があるかどうか疑わしい
などの理由を挙げて唯一の証拠とされた供述調書の信用性を否定。弁護側の主張を全面的に認め、主犯とされた県議を始め被告人12名[1]全員に無罪判決を言い渡した。
また、同じ事件で逮捕後に起訴猶予となったホテル経営者の取調べに際して、捜査担当者から、父や義父、孫など家族の名前と「こんな息子に育てた覚えは無い」「早く正直なじいちゃんになって」など家族からのメッセージに見立てた文章が書かれた紙を踏ませる「踏み字」を強要され、精神的苦痛を受けたとして、ホテル経営者が県を相手取って起こした民事訴訟(国家賠償請求訴訟)でも、2007年1月18日に鹿児島地裁で捜査手法の違法性を認め、約60万円の賠償を命じる判決が下された(県側の控訴断念により確定している)。なお、この件については、後日捜査担当者の濱田隆広警部補より謝罪文が本人宛に届いたが受領後すぐに返却されたもようであり、かつ濱田警部補を相手に特別公務員暴行凌虐容疑で刑事告訴し、その告訴状が受理されたことが報道によって明らかにされている。このほか、被告人との接見時の会話を捜査担当者が供述調書に記録した行為は接見交通権の侵害に当たるとして弁護人11名が原告となって起こしている訴訟、任意聴取を受けた集落の住民8名が自白の強要により精神的苦痛を受けたとして起こしている訴訟の2件が鹿児島地裁民事部で審理されている。
ちなみに、このように身内が被疑者を犯人だと決め付けている内容の手紙を見せることで、被疑者を絶望させ、虚偽自白に追い込む手法は、他の冤罪事件でも問題となっている。例えば、同時期に発生した富山連続婦女暴行冤罪事件でも、「お前の家族もお前がやったと言っている」といった取調官の言葉により、被告人が絶望し、自暴自棄になり自白に至っている。同時期に、鹿児島と富山、別々の地域で同じような手法が使われていることが明らかになったことから、家族の証言を偽造して、自白を迫る悪質な犯罪的手法が、全国の警察に普及していることが疑われている。これは、家族愛を悪用して、無実の人を犯人に仕立て上げ、警察が検挙ノルマを達成しているものであるから、「もはや、犯罪ではないのか?」と強い非難を浴びている。
鹿児島県警本部は、この事件に係わった当時の3人に対する処分を公表した。しかしその内容は以下のとおり極めて軽いものとなった。
踏み字取調べをした濱田隆広警部補:減給10分の1、3か月間
当時の志布志警察署長・黒 健治:本部長注意
捜査主任だった磯辺一信警部:所属長訓戒
なお、例年は3月に行われる鹿児島県警の人事異動が2007年は前倒しして2月に行われており、この事件の捜査に関わった担当者や幹部の大半が異動の対象となったことから、被告人の支援者などから「事件に絡む処分を回避するために異動の時期を早めたのではないか」との批判が挙がっている(ただし、4年に一度の統一地方選前の異動は毎回2月に行われている)。一方、指揮した志布志警察署長は判決の3日後に定年退職となっている。
3月6日: 鹿児島地検は控訴を断念する方針を固め、上級庁と最終調整。
鹿児島地検は、新たな証拠や判決が自白の信用性を完全否定しているため、控訴審で覆る見込みは薄いと判断。
3月8日: 12人の被告人全員の無罪が確定した。
この事態を受け、警察庁長官が当時の鹿児島県警本部長(現在は関東管区警察局総務部長)に対し「指揮・監督が不十分」として文書で注意した。事件の捜査に関して県警トップに注意が行なわれるのは極めて異例のことである。また、これに先だって判決後の27日には国家公安委員長が「当時の捜査について検証する必要がある」との認識を示し、捜査を指揮した幹部の処分の必要性についても言及するなど、重大な関心が寄せられている。
3月19日:鹿児島県警察の定例記者会見上で県警の本部長が謝罪。しかし、事件のフレームアップ(捏造)に関しては否定。
4月6日:朝日新聞が4月7日に鹿児島県警察の内部文書を入手し、鹿児島地検並びに鹿児島県警が公判について協議を行った際に、被告らの供述の矛盾が露呈している捜査資料については法廷に提出しないと、口裏を合わせていたと報道した。これによって、県警や地検は事件が捏造であった可能性が高いということを認識していたことが明らかになった。
4月9日:中山信一が鹿児島県議会議員選挙の志布志市・曽於郡区(定数1)にて再び当選。
4月14日:志布志事件の端緒となったとされるビール供与事件に関しても、志布志警察署の警部による供述の捏造があったとされる(毎日新聞報道)。
4月30日:公判中には既に、事件に関する裏付け捜査が充分ではなかったことを鹿児島地検が認識していたことを示す内部文書が報道された(朝日新聞報道)。
5月3日:県警と地検が、懲戒申し立てを狙い、被告達と弁護士のやり取りを調書にしていた事が判明。目的は自白を取る為の弁護士と被告の引き離し。地検は実際に、“弁護活動の行き過ぎ”を理由とする国選弁護人解任を地裁に申し立て、認められていた。
5月11日:鈴木宗男衆議院議員が法務委員会で本事件に関与して取り調べの可視化を要求。又、被告とされた中山県議が同日に鹿児島県議会の総務警察委員に就任。
マスコミによる追及
志布志事件を警察権力の犯罪としていち早く追及したのはテレビ朝日であり、スーパーモーニング・報道ステーションなどで13名(取材当時は後に死去する1名も応じていた)に取材した特集を組み違法捜査を暴露。並行して警察不祥事追及の第一人者であるジャーナリスト・鳥越俊太郎の番組ザ・スクープが、当時捜査にかかわり後に内部告発した現職警察官に取材して鹿児島県警察本部の捜査手法自体に問題ありと断じている(2007年3月4日のスペシャルにて放送された)。
また、判決が出る前後頃には日本テレビの鹿児島県での系列局鹿児島讀賣テレビが当時の志布志警察署署長と捜査を指揮した警部を直撃取材するなど、ようやく地元メディアでも責任追及が始まっている(この模様は「続・嘘ひいごろ」と題して2007年3月4日のNNNドキュメントで放送されたほか、これに先立って2006年9月17日にもNNNドキュメントで「嘘ひいごろ」として報じている)。
http://www.nishinippon.co.jp/news/wordbox/display/4674/
鹿児島選挙違反事件
2003年4月の鹿児島県議選に曽於郡区から立候補し、初当選した中山信一被告(61)と妻のシゲ子被告(58)が03年2?3月、同県志布志市の集落で会合を4回開き、有権者11人に計191万円を渡して買収したとされる事件。中山被告とシゲ子被告が買収の罪で、住民11人(1人は死亡し、公訴棄却)が被買収の罪で起訴された(うち1人は買収罪でも起訴)。 事件に関連する民事訴訟では、原告勝訴が確定した「踏み字訴訟」のほか、取調官が接見内容を調書に記録したのは「接見交通権」侵害だとして被告の弁護人11人が国と県を提訴。任意捜査の対象となった8人も「自白を強要された」として県を提訴し、鹿児島地裁で審理が続いている。
12被告全員に無罪 県議選選挙違反 鹿児島地裁判決 事件の存在否定
(2007年2月23日掲載)
●自白を強制、誘導
2003年4月の鹿児島県議選をめぐり、住民11人に現金を渡したなどとして、公選法違反(買収、被買収)の罪に問われた元県議中山信一被告(61)=同県志布志市=と住民ら計12被告の判決公判が23日、鹿児島地裁であり、谷敏行裁判長は被告12人全員に無罪(求刑懲役1年10月?6月)を言い渡した。判決は、捜査段階でいったん自供した五被告の自白調書の信用性を否定。4回あったとされる買収会合について「うち2回は存在しなかった」と断言し、残りの2回についても存在は不自然とし、事件の存在自体を事実上否定した。事件では容疑者らを精神的に追い詰めて自白を強要する「たたき割り」と呼ばれる捜査手法が問題化しており、捜査のあり方が厳しく問われる判決となった。
判決理由で谷裁判長は「自白は客観的事実と相いれず信用できない。内容も説明困難な変遷を繰り返しており、取調官による強制や誘導があった可能性も払しょくできない。あるはずもない会合をあったかのように述べている」などと述べた。
12被告のうち中山被告や妻のシゲ子被告(58)ら7人は一貫して無罪を主張。残る5人は捜査段階で容疑を認めたが、いずれも後に否認に転じ、自白調書の内容が信用できるかどうかが最大の争点だった。
判決はまず、4回開かれたとされる買収会合のうち1回目(2003年2月8日)と4回目(同年3月24日)の、中山被告のアリバイについて検討。「会合の現場から約20キロ離れたホテルであった同窓会などに出席していた」との中山被告の主張を認め「会合に参加することは物理的に不可能」とした。
また、自白調書の信用性については「会合の回数や受け取った金額が取り調べのたびに増えるなど、不自然な変遷がある」と指摘。「わずか七世帯しかない集落で4回も会合を開き、多額の現金を配ることにどれほどの実効性があるのかはなはだ疑問だ」とも述べた。
この事件をめぐっては、中山被告の共犯容疑で逮捕され、起訴猶予処分とされたホテル経営川畑幸夫さん(61)が「取調官に親族の名前を書いた紙を無理やり踏まされ、自白を強要された」として県(県警)に賠償を求めて提訴(踏み字訴訟)。1月18日の判決は「取調官は公権力をかさに着て川畑さんを侮辱した」と、取り調べの違法性を認めて県に賠償を命令。県側が控訴を断念し、判決が確定した。
http://373news.com/modules/pickup/topic.php?topicid=121
鹿県議選事件 買収会合の存否答えず/県議会で県警本部長
(06/16 07:46)
鹿児島県議選買収事件を追及する質問にうつむき加減で耳を傾ける久我英一県警本部長=15日午後1時35分、県議会本会議場 12人の志布志市民が無罪となった2003年の鹿児島県議選買収事件で、鹿児島地裁判決が存在を否定した買収会合について、県警の久我英一本部長は15日の県議会代表質問で、「(会合が存在したかの)認否を控えさせていただく」と述べ、明確な回答を避けた。質問した民主・社民・無所属連合の二牟礼正博議員は「会合はあったが立証不十分との考えなのか。事件の根幹にかかわる」と追及したが、同様の答弁に終始した。
地裁判決は検察側が4回あったとした買収会合のうち、1、4回目で、主犯とされた当時元県議の中山信一議員のアリバイを認め、全員無罪を言い渡した。
二牟礼議員は「会合はなかったと認めるか、立証不十分とするかでは再発防止策が異なる」と強調。しかし、久我本部長は「判決を真摯(しんし)に重く受け止めている」と繰り返すにとどまった。存在が明らかになった、県警と地検による公判対策の協議をまとめた文書の存否についても、「個人のプライバシーや名誉を害し、捜査に支障が生じる」と明確にしなかった。
判決で捜査手法を強圧的、追及的と指摘されたことを受け、県警が行った内部調査の結果については「できる限り県議会で明らかにする」と述べたが、個人情報や捜査手法にかかわる点は公表できないと従来の見解を繰り返した。
1http://mytown.asahi.com/kagoshima/news.php?k_id=47000000706160001
県警本部長、志布志事件の明確な答弁避ける
2007年06月16日
県議会の代表質問が15日あり、県警の久我英一本部長は、12人全員の無罪が確定した03年の県議選をめぐる公職選挙法違反事件について「判決は重く受け止めるが、捜査手法にかかわることは公表できない」などと述べ、これまで同様、あいまいな答弁を繰り返した。また、次々に明らかになっている県警内部文書については「今後の捜査運営に支障が生じる恐れがある」として、存在の有無さえも回答を避けた。
質問に立ったのは、二牟礼正博議員(民主・社民・無所属連合)。二牟礼議員は、一連の捜査で任意の取り調べ中に親族の名前が書かれた紙を志布志市内の男性(61)に踏ませた「踏み字」事件について、「(賠償金として)県が支払った60万円は警部補本人に支払わせるべきだ」として、対応をただした。
久我本部長は「判決では(踏み字をさせた)警部補の故意が明確になっていない」などとしたほか、警部補が特別公務員暴行陵虐容疑で告訴されていることにも触れ、「総合的に勘案し、他県の事例も参考にし、適切に検討する」と述べた。
さらに、判決後の内部調査の結果については、「できる限り明らかにしたいが、個人のプライバシーや個々の捜査手法の中身については公表できない」と答弁した。
二牟礼議員が捜査のずさんさを裏付ける県警と鹿児島地検の協議内容を記した内部文書について実物を示して質問すると、久我本部長は「答えは差し控える」と述べ、いずれの質問に対しても従来通り明確な答弁を避けた。
二牟礼議員が「あいまいな答弁をしているから信頼を失う。(起訴事実となった)買収会合は無かったと認めるのか」などと語気を強めて問いただす場面もあったが、久我本部長は「判決を真摯(しん・し)に受け止める。犯罪事実の存否について、これ以上は控える」と繰り返すだけだった。
事件の「主犯」とされ、逮捕された中山信一議員が、二牟礼議員の追及に「そうだ」と声を上げる場面もあった。中山議員は本部長の答弁を聴き、「怒りがこみ上げた。これでどうして信頼が回復できるのか」と話した